下肢の症状

1.太ももの付け根が痛くて足がでにくい

 太ももの付け根というのは股関節のある部分です。この部分から太ももの前にかけての痛みの原因は、次の3つが考えられます。

1)変形性股関節症
2)大腿神経痛
3)筋肉痛

 1)はレントゲンを撮ればわかります。2)は腰椎椎間板ヘルニアなどが主な原因です。頻度的には3)が最も多いようです。筋肉の痛みというのは、検査でわからないので、原因不明とされることが多いようです。でも、足が出にくいとか階段を上りにくいといった症状や、押さえて痛む部位を総合的に判断すれば診断できます。薬と適切な運動、あるいはリハビリを組み合わせれば改善しますが、なかなか効果が出ない場合はブロック注射が効果的です。

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2.スネが痛くて歩きづらい

 「スネ」というのは膝下から足首の上までを指します。痛む場所によって原因が違います。

1)スネの前
 ここには前脛骨筋という筋肉があり、歩きすぎたりして筋肉が緊張し続けると、その部分の血流が悪くなり疼痛が長引きます。これを前脛骨筋コンパートメント症候群と言います。治療としては、まずこの筋肉の疲労をとり、緊張を和らげることです。
2)スネの後
 ここはふくらはぎの部分です。ここには多くの筋肉があつまり、次のような様々な疾患で痛みを伴います。
 ①いわゆる肉離れ。これは筋肉に負荷がかかって筋肉を痛めた状態ですが、場合によっては筋肉内部で出血をおこしたりします。基本的な治療としては受傷直後はアイシングを行います。続いて包帯を巻いて圧迫し、さらに消炎鎮痛剤も利用すると良いでしょう。安静は特に必要ありません
 ②アキレス腱断裂。これが起こる瞬間、ふくらはぎをハンマーで叩かれたような感じだと言われることがあります。エコーで検査して、たいていは断裂した部分を手術で縫い合わせますが、場合によっては保存的治療(手術をしない方法)を行うこともあります。
 ③深部静脈血栓。エコノミー症候群とも言われ、長時間下肢を動かさないと静脈が詰まっておこります。しばらくは安静にして、血栓溶解療法を行います。予防としては、下肢をしっかり動かすことにつきます。
3)スネの内側
 内側の骨に沿った痛みは、シンスプリントの可能性が高いです。これは過労性脛部痛ともいわれ、初期のころに激しく運動するとなることが多いようです。治療は、運動を制限し、消炎鎮痛剤を利用することが多いですが、足底板を作成して足の負担を減らすことも有効です。
4)スネの外側
 これは高齢の方に比較的多く、よく座骨神経痛と診断されていることが多いです。たしかに、椎間板ヘルニアなどによる神経痛のこともありますが、この部分にある筋肉(長腓骨筋、短腓骨筋)の痛みのことが多いです。治療としては温熱や電気治療もある程度効果がありますが、早く治そうとするならこの部位へのブロック注射が有効です。さらに、この部分の筋肉の緊張をゆるめるように調整した足底板で再発予防をすることができます。

 いずれの場合も合わない靴が一因で足に負担がかかっている場合が多いようです。そんな場合、きちっと足に合わせた足底板を入れることで改善しますので、是非ご相談下さい。

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3.膝が痛むが手術はしたくない

 膝の痛みの原因はいろいろですが、ここでは変形性膝関節症のことについて述べます。その場合、手術をするには3つの理由が必要です。

1)膝の変形が高度
2)運動・注射・薬だけでは効果が少ない
(ヒアルロン酸の注射が効かないから手術、というのは短絡的です。他にも治療の選択肢があります。)
3)痛みのため、日常生活に支障がある

このどれが欠けても、手術をする理由としては不十分です。でも逆に、この3つの理由があっても手術を拒むのは得策ではありません。人工膝関節の成績は非常に優れています。痛みをがまんして生活するよりも、手術をして毎日しっかり歩いた方が、よっぽど健康的な人生を送れます。当院では、おもに神戸海星病院へ紹介しています。

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4.外反母趾が気になる

 外反母趾は遺伝的なこともありますが、足のアーチが崩れると進行します。それを防ぐには、足に合った靴をはくことです。特に、足のアーチをしっかり支えるような靴が良いのですが、市販ではそのような靴も、足底板(中敷き)もありません。そこで当院では、それぞれの人に直接合わせて足底板を作成しています。

<外反母趾の手術>
 外反母趾で手術を考慮するのは、次のような場合です。

1)外反母趾の痛みのため歩きにくい
2)指が重なって皮膚潰瘍ができる
3)見た目が嫌でがまんできない

 外反母趾を形まで含めてきちんと治そうと思えば「骨を切って形を整える」ことが必要ですが、2)の場合、母趾を外反する腱を切り離すだけの手術でも改善します。これは当院でも行っています。

 ところで「外反母趾が痛くて」というあなた、それ本当に外反母趾ですか?当院にもそう言って来られる患者さんが大勢いますが、レントゲンを撮ってみると外反母趾ではなく、「強剛母趾」であることが多いのです。これは、母趾の付け根の関節(MP関節)の軟骨がすり減って関節が固くなり、歩くとき体重がかかると痛むものです。対処法としては、足底板で母趾にかかる負担を減らすことです。シップや痛み止めだけでは、根本的な対策になりません。

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