皮膚の症状

1.皮膚のかゆみがつらい

 皮膚のかゆみが起こる主なものを3つ挙げます。

1)湿疹
2)虫刺され
3)じんましん

1)では接触や体内に取り込まれた化学物質などが原因で皮膚に炎症が起こる場合が多く、2)では虫に刺されたときに刺激物質が注入されて炎症がおこります。3)ではなんらかの原因で血管が拡張し、かゆみを起こす成分(ヒスタミンなど)が血管からもれて腫れとかゆみを生じます。いずれもアレルギーが関連することがあります。また、皮膚の乾燥が原因で皮膚の角質がいたみ、それが原因でかゆみが出る事もあります。治療としては、

1)抗ヒスタミン剤(飲み薬)
(アレルギーを抑える)
2)ステロイド外用剤
(炎症を抑える)
3)保湿剤
(皮膚の乾燥を防ぐ)

などを使います。ステロイド外用剤は怖くて使えないという人がいますが、体に吸収されることはほとんど無いので心配無用です。ただし、感染を合併しているときは注意が必要なので、自分で薬局で購入して塗るのはお勧めできません。

 なかなか改善しなかったり、繰り返す場合にアレルギーを調べる血液検査をしますが、それでもアレルギーの原因物質が不明の場合があります。
 免疫の異常があっておこるものは、尋常性乾癬アトピー性皮膚炎などがあり、なかなか治らない場合が多いので、その場合は免疫を調整する薬を使うこともあります。

ともかく、かゆみの原因もいろいろ、皮膚の状態も個人差があるので、その人に応じた治療をする必要があります。

⇒TOPへ

2.アトピーが治らない

 アトピーは適切に治療をしたら必ず良くなります。アトピーの皮膚でおこっていることは

1)角質が痛んで皮膚のバリヤーが壊れる。
2)壊れたバリヤーから異物が入り、それがアレルゲンとして働く
3)免疫の異常な働

などです。かゆみのため皮膚をかきむしると、さらに皮膚のバリヤーが壊れるといった悪循環に陥ります。アトピーの治療としては

1)ステロイドの外用薬をきちんと使う
2)顔など部位によっては免疫を調整する軟膏を使う
〔プロトピック、コレクチム、モイゼルト〕
3)皮膚の乾燥に対処する
〔白色ワセリン、ヘパリン類似物質など〕
4)かゆみの強い場合は抗ヒスタミン剤を内服する
5)重症のアトピーの場合は、生物学的製剤を使用する

ステロイドは副作用が怖いという人が時々います。しかし、外用のステロイドは血液中には殆ど吸収されないので、全身の副作用は心配要りません。ただ、顔に長期間塗っていると皮膚が薄くなったり、目の近くに長期間塗っていると緑内障を起こしたりしますので、プロトピックなどを使います。アトピーが治らないと言っている多くの場合、外用療法がきちんと行われていないことによります。まずはステロイドの外用薬を正しく使い、なるべく早く皮膚を正常な状態にもってゆくことが、アトピーの悪循環を断ち切るのに必要なことです。

⇒TOPへ

3.ニキビやニキビ跡が気になる

【ニキビについて】
 ニキビは次の3段階でできます。

1)毛穴が角質でつまる

2)毛穴に脂肪がたまる

3)アクネ菌が感染する

多くの場合、これらが混在しますから、これらに対応した治療を同時に行う必要があります。具体的には

1)角質を取り除く
〔外用薬(保険適応)。ケミカルピーリング(保険適応外)〕
2)脂肪の分泌を正常化する
〔ビタミンB2、B6などの内服〕
3)アクネ菌を殺菌する
〔外用抗生剤、重症には内服薬〕

これで、たいていは良くなります。ただ、角質を取り除く治療の効果がでるのに数か月はかかるので、すぐに効果がでないからといって中断しないことが大切です。

 *それでもニキビなかなか良くならないという場合には、フォト治療(保健適応外)という選択肢があります。光と高周波により、アクネ菌を殺菌すると同時に毛穴を引き締めます。ニキビ跡にも効果があります。詳しくはこちら ⇒フォト治療

【ニキビ跡】
 次にニキビ跡ですが、「ニキビ跡」を治したいといって来られるのは次の二つのパターンがあります。

1)ニキビ後の赤い跡
2)ニキビ後の皮膚の陥凹

ニキビ後の赤い跡はニキビの炎症が残った部分で、血管が拡張した状態です。ですから、炎症がおさまれば赤味は薄れてゆくし、血管拡張を抑えるような薬(漢方薬)で改善します。一方、皮膚が凹んでしまった部分は薬では良くなりません。軽い場合はケミカルピーリングでも改善が得られますが、目立つ凹みに対してはフラクショナルレーザーが効果的で、当院でも行っています。

*ニキビ・ニキビ跡の治療について詳しくはこちら ⇒Be-Skinのニキビ治療

⇒TOPへ

4.手荒れを繰り返す

 体の湿疹はある程度早く治るのに、手荒れはなかなか治らない、という人は多いようです。その原因としてはいろいろ考えられます。

1)水や様々な物質に触れる機会が多い
2)気温低下や空気乾燥の影響を受けやすい
3)体の端にあるので血流不良になりやすい
4)皮膚が比較的厚いので薬の浸透が悪い(個人差あり

 これらの様々な条件をクリアーすれば改善の余地はあります。まず普段気をつけることは

1)手についた汚れはしっかりと落とす。汚れの種類によってはすぐ落とさなければならないこともあります。
2)強い洗剤は使わない。洗剤を使ったあとはよくすすぐ。
3)手を洗ったあとは、しっかり水をふき取る。
4)手を洗うのはお湯より水のほうが良い。(お湯は手の皮脂を奪ってしまう。)
5)冬は手袋などをつかって外気にさらさない。

そして治療としては

1)深いひび割れは、ステロイド外用で改善したら、ワセリンをベースとした保湿剤で皮膚を保護する。
2)かゆみの強い場合は、抗ヒスタミン剤を内服する。
3)手の血流の悪い人は、漢方薬などで血流改善をはかる。

手荒れはこのように、日常生活や仕事でのさまざまな状況を改善しなければ、治療効果に乏しい場合があるのでご注意ください。

⇒TOPへ

5.できものが悪性かどうか心配

他院で処方された薬をできものに塗っても改善しないということで当院に来られた方が何人かおられます。そのなかで悪性腫瘍だったというケースが2例ほどありました。一例は足の皮膚腫瘍で一見しておかしいと思い、大学病院に紹介したところ「メラノーマ」でした。メラノーマは「悪性黒色腫」と言われ、命にもかかわるものです。一般的には黒いのですが、その人の場合には白っぽいものであったため、前医で見逃されたのだと思います。幸いその人は手術後の転移もなく、20年経った今でも元気で過ごしています。もう一人はおでこのシミで、前医の皮膚科ではステロイドの外用剤を処方されていたようです。ダーモスコピーという道具で調べると、普通のシミではないと思われたので切除して検査に出したところ、「日光角化症」という皮膚がんの前段階でした。

 このように、皮膚のできものはぱっと見て良性か悪性の区別がつかない場合も多いのです。次にホクロのような3つの写真を挙げますがそれぞれ別物です。

1)黒子(ホクロ)

2)脂漏性角化症

3)悪性黒色腫

2)と3)を比べると2)のほうが悪性に見えるかもしれませんが、悪性は3)だけです。これらを調べるのに、ダーモスコピーという特殊なルーぺのようなものを使って、その色素パターンをチェックするのです。当院ではホクロやシミの治療には必ずダーモスコピーを実施して、悪性のものがないかをチェックしています。

皮膚の悪性腫瘍としては、主として次のようなものがあります。

・メラノーマ(悪性黒色腫)・基底細胞癌・有棘細胞癌・日光角化症(有棘細胞癌の前段階)

当院では、ダーモスコピーで怪しいと思ったものは神戸大学の皮膚科に紹介しています。紹介したケースのほとんどが上記のいずれかの悪性腫瘍でした。ご心配な方は、できものが大きくならないうちに、ご相談ください。

⇒TOPへ

6. しみやシワを改善したい

【しみ】
一口に「しみ」と言ってもいろいろなものがあります。いくつか挙げて、代表的な治療法を説明します。もちろん治療法は一つとは限りません。多くのしみは保険適応外ですが太田母斑など保険適応となるものもあります。

1)日光黒子
⇒Qスイッチルビーレーザー
2)脂漏性角化症
⇒炭酸ガスレーザー
3)そばかす
⇒アレクサンドライトレーザー
4)後天性真皮メラノサイトーシス
⇒Qスイッチルビーレーザー
5)太田母斑
⇒Qスイッチルビーレーザー
6)肝斑
⇒トラネキサム酸内服

詳細はこちらをご覧ください。
⇒Be-Skinしみ治療

【シワ】
シワは皮膚の深い部分から起こるので、しみのように簡単にはいきません。大きく分けて二つの方法があります。

1)皮膚を引き締めて小じわを改善する
⇒ タイトニング、フラクショナルレーザー
2)ヒアルロン酸注入

これ以外の治療としてボトックスもありますが、合併症が多いので当院では行っていません。
詳細はこちらをご覧ください。
⇒Be-Skinシワ治療

⇒TOPへ

7.傷あとが気になる

 いったん皮膚が損傷を受けると、条件によっては傷あとが残ります。いくつかの場合を挙げると

1)皮膚の損傷がひどい場合
2)創傷処置そのものに問題が有る場合
3)傷は治ったが色素沈着を残す場合
4)ケロイド体質

 皮膚の損傷がひどい場合は、一度に全てを修復することは困難な場合があり、とりあえず見栄えは悪くても機能的なものを修復することになります。また、皮膚や皮下組織の血管が損傷を受けた場合、傷がなかなか治らず、治っても跡が残りやすくなります。いずれの場合もいったん傷がおちついてから、傷あとを目立ちにくくする追加手術を行います。
 創傷処置の際、皮膚がずれた状態で縫い合わせると傷が目立つ場合があります。場合によっては傷がつかないということもありえます。また、皮膚の緊張が強い状態で縫い合わせると、傷の幅が広がったり、治ったあとでまた傷が開いたりします。この場合は、傷を縫いなおすといったことが必要になります。
 外傷後に皮膚に色素沈着を残す場合がありますが(外傷性刺青)、これはQスイッチルビーレーザで改善することも多いです。(保健適応)
 ケロイド体質の場合、傷あとがだんだん広がって盛上ってくるといったことが起こることがあります。特に、胸などの傷に多く起こります。ケロイド部分を切除して縫合しても再発することが多いので、ケロイド内にステロイドを注入する方法もあります。

いずれにしても、傷あとの状態によって対応はまちまちなので、気になる方はご相談下さい。

⇒TOPへ

8.爪が変形したり色が変わっている

 爪が変形したり色が変わる原因はいろいろあります。

1)機械的な作用
2)炎症
3)感染
4)腫瘍

 足の小趾の爪が変形している人は多いですが、これは常に靴で小趾に圧迫が加わっていることが原因です。また、陥入爪も母趾に体重がかかって悪化している場合がよくみられます。また、小さい靴をはいていると爪はいつも靴の中でぶつかり、爪ががたがたになったり爪下出血のためにあずき色に変色している場合があります。適切な靴を選ぶことが大切で、足底板で足趾の負担を減らすという方法もあります。
 爪の根本の部分(爪母)で炎症が起こると生えてくる爪にも影響がでます。特に手指の湿疹が長く続くと爪ががたがになることがあります。また、尋常性乾癬といわれる難治性の皮膚炎でも爪の異常がおこる例があります。これに対しては、ステロイドの外用薬や原因疾患の治療が必要です。
 感染として最も頻度の高いのは白癬によるものですが、カンジダによるものも見られます。これに対しては抗菌剤の服用もしくは外用で治療を行います。
 爪の根本にホクロがあって、爪が延びるにしたがって黒いスジが入ることがあります。怖いのは、それがホクロではなくて悪性黒色腫(メラノーマ)だったときのことです。ですから、爪に黒いスジが入ってるときは、かならず医療機関を受診してください。

⇒TOPへ